紫波サイダー物語 2

I

長い間抱えていたアイディアの起源を思い起こすのは難しい。

 ずっと前、田舎では何か欲しい物があれば、自分で作るか育てるかだ、と誰かに言われた。この考え方は、僕の紫波での生活に大きな影響を及ぼしてきた。アメリカで飲んでいたサイダーが飲みたいと思った時、紫波でサイダーを作ろう、と考えたのは自然の流れだった。その後、アメリカでサイダーが人気だと聞いた時、この思いは更に強まった。shiwa apples circulating in shiwa

 僕のもう一つの発想の源は、町の政策「循環型まちづくり」だ。これは、紫波の自然、人、経済の資源を町内で循環させるというもので、つまり、自分達の生活を良くするには、今あるものを有効に活用するのが最善だという考えだ。

 サイダー作りは、循環型まちづくりの一環だと僕は考えた。町内で育ったりんごをサイダーにし、町内で消費する。りんごを育てた農家がサイダーを楽しむなんて素晴らしいことではないか?

 これが本当に可能かどうかを知るために、僕はりんご業界について更に学ばなければならなかった。

II

その目的のため、りんご農家である友人にインタビューをした。僕はこの10年で、彼は頭が切れ独創的に物事を考える人だと分かった。あまりにも頭の回転が速いため、周りの僕達はついていくことが難しい人物だ。僕は彼から多くのことを学んだ。出会って最初に教わったこと:白鳥の好物はレンコン。

 この記事のために彼を「りんご博士」と呼びたかった。「りんご」は彼が大きなりんご畑を所有するからで、「博士」は彼が何でも知っていることから来る。しかし、彼はインタビューで話したことは個人の見解で専門家ではない、と言い、代わりに「りんごアウトロー」と呼んでほしいと言った。

 以下が、彼に尋ねた質問の一部だ。

紫波でサイダーを作るというアイディアをどう思うか?

紫波のりんごで紫波の人が飲むサイダーを作るのは、良いアイディアだと思う。紫波はりんご生産量は多いが、りんごを作るだけという農家は多い。そんな農家のりんごを使った製品を喜ぶのではないか。

紫波の人はサイダーを買うだろうか?

ベアレンのようなサイダーを目指すのであれば買うと思うが、価格にもよる。紫波の人の定義にもよる。若い人達はサイダーを飲むだろうが、ここで育った人はビールよりも日本酒を好む場合もある。自分も新しい味に慣れるのには時間がかかるかもしれない。サイダーを飲むという文化が定着すれば、みんな飲むと思う。ただ、最初は苦労するかもしれない。

 シードルの方が日本人に馴染みはあるが、甘い飲み物という印象。だから、最初はそのイメージを払拭するのに苦労するだろう。「ドライ」という言葉を商品名に入れれば、辛口であることを伝えやすいかもしれない。

 でも、この辺りは新しいことを受け入れるようになったので、サイダーも受け入れられるかもしれない。りんご農家が喜ぶサイダーを作るというのは良いと思う。

りんごは買った方が良いか、それとも育てた方が良いか?

自分達でりんごを作るのは大変だろう。夏まではほぼ毎週、組合の人達と組んで農薬散布をしなければならない。

 誰かにりんごの世話を頼んでもいいだろうが、農家を辞めようと思っている人の畑を借りた方がいいかもしれない。近所に、若い農家にとても安い値段で貸している元りんご農家がいる。でも、農薬散布はとても金がかかる。自分の一町歩の畑では、年に約60万円ほどかかる。

 使われていないりんご畑を探すには、農業委員会に行くのが筋だが、現実的には口コミを頼りに探すとよいだろう。古館はそういった畑を見つけられる可能性が高い。

 日本では、実を大きくするために、小さな実を1つ残して摘む間引きをする。大変な作業だ。1反歩、約100㎡あたりでそれなりの収量を得ようとする場合のコストを下げることが重要だと思う。だから、農家が少なくなって来ている今、1つの現実的な方法としては、大きな畑でも少人数でできるぐらいの作業量に改善すること。それは農業刷新につながる。例えば、りんごに多少傷が付いても良いから、収穫は機械を使って1人でやる、など。省力化がカギだ。

傷りんごを使うのはどうか?

傷りんごは思う以上に少ない。台風などが来れば別だが。ちょっとした傷みなら売ることはできるし。自分の1町歩の畑では、傷りんごは年に平均20箱程度。

 傷りんごの値段は、1箱数百円程度でとても安い。自分が売ってあげてもよい。または、JAに聞いてみてもよいだろう。この時期であれば、JAでもまだ売り先を決めていないのではないか。

どのタイミングで農家に尋ねるのがよいか?

収穫後が良い。どのぐらいの大きさのりんごをいくら欲しい、と具体的に言っておく。農家のほとんどは生食用りんごを作っているので、サイダー用に小さくと頼んでも、どのぐらいの甘さになるのかが分からないかもしれない。でも、この辺りの気温差であれば、糖度について心配する必要はほとんど無いだろう。

りんごアウトローと話した後、待ち受ける課題がずっと明確になった。農家は紫波で作られる製品にりんごが使われるのを喜ぶかもしれないが、僕達がサイダー文化を創り出さない限り、進んでその製品を消費しないかもしれない。しかし、彼が言ったように、紫波は新しいものを受け入れるようになった。何しろ、僕のことも受け入れてくれた。だから、僕は楽観的にならずにはいられない。

 

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